製品の仕上げ---種々の技術を駆使
鋳型から取り出した鋳物は、そのままでは、製品にはならない。合わせ型の場合、湯口の部分につまった金属や、鋳型の合わせ目の隙間に金属がはみ出した部分、すなわち甲張(こうば)りをタガネで切り取ったり、ヤスリで削り落としたりして、形を整えなくてはならない。細かい文様のある場合などは、さらに細部を入念に細工して仕上げる。鏡の場合は、鏡面をピカピカに磨さ上げて、姿が映るようにする。
飛鳥池工房からはこうした種々の仕上げ作業によってできた切り屑もみつかっている。小さい円を密に打つ魚子をはどこした銅板もみつかっている。魚子(ななこ)の技法は国産としては、長谷寺鋼板法華説相図と共に、わが国ては最古の実例である。そして鍍金もここでおこなわれていたことがわかる。鍍金は、水銀を用いたアマルガム法によっておこなわれたようである。銅板は、銅塊を打ち廷ばしてつくる。
飛鳥池工房では、鋳物・鍛治関係の遺物とともに漆関係の遺物も見つかっている。金属製品に漆を塗って仕上げるためのものであろう。
鍛造品でも、細部の形のつくりだしは、やはりタガネ、ヤスリなどを用いた。もちろん、武器や刃物のばあいは、焼きを入れ、砥石で刃を研ぎだす。
砥石は、手に持って使う小型の砥石の他に、据え置きの大型の砥石もある。製品の形や、大きさに応じて使い分けられた。
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