坩堝(るつぼ)の役割
坩堝は、溶かすための金属を入れる器であって、飛鳥池工房では、土製の砲弾形をした分厚いつくりのものがある。
坩堝の中には、地金を入れて、溶かすが、特に、合金をつくる役割もはたす。
銅を溶かすには1,000度以上の高温を要するが、例えば、銅・錫・鉛を主成分とする青銅すなわちブロンズにすると純銅の場合よりも低い温度で溶かすことができるし、湯が流れやすくなるなどの特性がえられる。
坩堝でとかされた金属、すなわち湯(ゆ)は、鋳型に流し込まれる。これには、坩堝を鉄鉗(かなはし)、すなわち、握り部分の長いヤットコでつかみ、直接鋳型に流す場合と、あるいは、坩堝からいったん、取瓶(とりべ)にうつして鋳型に流しこむばあいもあった。坩堝には、湯を流す便のため片口をつけたものもある。
現代の鋳物で使っている坩堝は、形は、古代のものと大差ないが、黒鉛を主材料にしたもので、溶かす分量に応して大小がある。
なお、梵鐘の鋳造などのように、大量の金属を要するときには、小型の坩堝では間に合わなかったはずで、後世、甑炉(こしきろ)と呼ばれるような大型の据付式の溶解炉が用いられたであろう。奈良県東大寺の鋳造工房(8世紀後半)では梵鐘を鋳造したかとみられる巨大な鋳造遺構に近接して、溶解炉とおもわれる遺構が見つかっている。
近代まで各地でつかわれた甑炉は、ダルマストーブを大さくしたような形の中膨らみの土製で、外側に鉄のたがをかけたものが一般的である。内部に炭と溶かす金属をいれ、外から鞴で風を送り込み高温で溶かし、「都の口から湯をながす仕組みになっている。
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