鉄を鍛える---鉄は熱いうちに打て
鉄製品の製作には、鋳型を使う方法の他に鍛造があったが、ごく一部を除いて鍛造が主流であろう。鍛造とは、熱した鉄を熱いうちに何度も槌で叩いて鍛え、望みの形に造る方法である。鍛造は、鍛治屋(かじや)の技術である。いまでは、はとんど姿を消してしまったが、つい近年まで、どこの町にも村にも鍛治屋さんがあって、トンテンカンという槌昔が響いていたものである。
刃先の欠けた鍬など農具の補修に、また馬の蹄鉄を作ったり、馬の足に打ちつけるのも鍛治屋の仕事だった。
さて、鍛造では、まず、炉に炭をもり、鉄を炉にいれて、鞴で風を送りこみ、加熱する。そして真っ赤に焼けた鉄を鉄鉗ではさみ、鉄床(かなとこ)の上で金槌を用いて何度も打ちのばし、鍛える。鍛えることによって、形を整えて行くと同時に、鉄の中に炭素の割合を多くし、硬い鉄に変えるわけである。飛鳥池工房出土の鉄鏃、刀子はこうした方法でつくられた。
現代の鍛治屋は、炭のかわりにコークスを焼料につかい、鞴のかわりに電動の送風器を使うが、枝術の根幹は占代以来変わらない。
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