鋳型の製作
鋳物は、溶かした金属を型に流し込んで作る方法である。したがって、鋳物つくりでは、まず、鋳型の製作が大事な仕事になる。鋳型しだいで製品の出来ばえが大きく左右されるからである。
弥生時代の銅の鋳物では、鋳型は、石に彫り込んだ石型が主であったが、のちには、土製の鋳型も採用された。飛鳥池から、見つかった鋳型は、石製は、2点のみで、ほかは、土製である。雌型(めがた)を彫り込んで、湯口をもうけた2枚の外型を重ねあわせて、その隙間に溶けたそうがた金属を流し込む、後に惣型と呼ばォLる技法である。飛鳥池工房では梅獣葡萄鏡の鋳型や、仏像などの鋳型がみつかっており、この他製品の不明な鋳型も多い。鋳型の製作には、直接鋳型にはりこむ技法と、別に木などで造った原型があって、それを鋳型に転写する方法とがある。
また、精細な文様が必要なばあいは、土で大まかな形を作ったあと表画に密蝋(みつろう)をかぶせ、そこに文様を彫り込んで原型を作る。蝋型のうえに土をかぶせ、焼きあげると蝋はとんでしまって、雌型ができる。
法隆寺四十八体仏など飛鳥時代の金銅仏は多くこの枝法で造られたらしい。飛鳥池工房で出土した梅獣葡萄鏡の型は真土(まね)によってつくられた精巧な鋳型である。蝋型によったか、あるいは、現物を原型にした踏返(あぶみかえ)しの枝法によるものであろう。
現代の鋳造では、土製鋳型は、真土(まね)とよばれる精選された粘土を水で溶き砂を混ぜたものでつくられる。内側にきめの細かい真土を使い、外側には、きめの粗い真土を使って鋳型を造り焼きあげる。
現代の鋳型には、このような真土で作った惣型の他に、熱を加えて乾燥させただげで使用できる手間のかからない砂型を用いることが多い。
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