風を送る---鞴(ふいご)
鞴といえば、つい近年までは、鋳物屋や鍛治屋では、木の箱で造られていた箱鞴、あるいは、大型の踏鞴(たたら)が一般的に用いられていた。いまではモーターによる送風器に変わっている。
この時代のぶいごは、鞴の語源とされる「吹皮」の文字どおり皮の袋でつくられたものであった。正倉院文書には、寺院建築工事にさいしての枝術者の中に「吹皮工」の文字が見えるし、また、法華寺の造営に際して、吹皮、すなわち輔を購入した記録も残されている。皮製の鞴は、遠く、古代エジプトの壁画にも見え、古い伝続を持っている。
鞴の一端は、すぼみ、送風管が取り付く。皮袋を踏んだり、ふくらましたりして風を送るわけである。送風管の先端、炉との接続部には、土製で円筒状の羽口がつけられる。遺跡から発見される羽口は、炉に入る部分が強い火熱を受けて焼けただれている。こわれやすいものであったため、遺跡でみつかるのは、バラバラになったものが多い。飛鳥池工房の発掘では、溶解のたび毎に新しいものに取り替えられたかと思われるほど、おびただしい数の破片がみつかっている。
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