敦煌県鳴沙山で洞窟が開けられるのは北涼の升平l0年(336)のことである。多くの素堀り窟のなかの幾つかに彩色が施された。その1つ、268窟では、壁に釈迦の交脚像の上に円光背をつけた飛大が描かれた。太い筆で輪郭をとった、いわゆる敦煌スタイルのタッチで、飛天の姿は腰をまげたV字形にし、頭部は円く、顔の細部は太い筆のため荒っぽくなっている。上半身裸で、下半身に裙をはく。足は素足、天衣(領布・ショール)の表現は、うまくない。また、この窟の天井の四隅に各1人ずつの飛天が居り、躰はL字形で、時計と逆回転に浮んでいる。天衣を両手にまきつける。
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