今を去る2000年の昔、仏教の飛天はインド亜大陸で、誕生し、仏教の東漸とともに、東西文明の交叉点ともいうべき西城の地に拡まった。そして、インド文明に地中海地域の様々な文明の要素を加えた飛天は中国に受容された後、東洋的に完成された様式をとるに至る。南北朝、隋、唐各時代の石窟、あるいは王城の大寺院を荘厳したこの飛天は、飛鳥時代になって日本へ渡来する。以後我国の仏教の興隆にともない、払教関連の工芸、絵画、建築を飾り、仏法を讃える重要な意匠として、多くの作品が残されることとなるが、とりわけ法隆寺には金堂壁画を始め金堂天蓋、幡、玉虫厨子、伝橘夫人厨子など華麗な飛天の姿を飾る宝物が数多く収蔵されている。
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