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ガラス工房[8]


生産量
飛鳥池の遺跡からは90個を越すガラス坩堝が見つかっている。大、中、小3種類があり、それがどのように使い分けられていたかは分らないが、ほとんどは容量400cc前後の大形のものだった。

話を簡単にするために、これに300ccのガラスが実際に入っていたとしてみよう。これだけのガラス量でどれだけの玉が作れるだろうか。

ガラス玉の鋳型の窪みの直径は約5mm、すると1個の玉のガラス量は、0.07cc以下しかない。1つの坩堝のガラス全部が無駄なく、この鋳型に流し込まれれば、4,285個の小玉が出来あがる。どの程度の損失を見込むか、かなり問題だが、気をつけて坩堝をひっくり返さないように仕事をすれば、4,000個程の玉を作ることは出来るだろう。勿論、この工房のガラスすべてが、直径5mmのガラス玉に、加工されたわけではないだろうが、話の勢いで、一応全部を5mmの玉としてみる。坩堝、l00個で30,000cc、120kg程のガラスがあって、ざっと40万のガラス玉が出来る勘定になる。

坩堝が、なんども繰り返して使われたこと、当時の坩堝がすべて発掘で見つかる窪もないことを考えてみると、この工房で作られたガラス玉の数は、百万の単位を超えることは間違いあるまい。

ついでに、計算を続けてみると、高松塚にみられるような、直径1cm位の丸玉で、ロスを見込んでも、一禍で500個程。正倉院のトンボ玉位、1,7cmの玉だと100個程が出来たと思われる。工房の仕事も大変だろうが、ガラス原料の鉱石や燃料の炭を運ぴ込む仕事に、いったいどれほどの人々の労力がついやされたかは、想像を絶する。


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