ガラス工房[2]
玉を巻く
何体かを束にした素材のガラス棒を炎の上にかざして、先端がやわらかくなるまで熱くして、水アメのようになったガラスを、鉄線に巻きとる。巻きとったガラスを、更に炎であぶって、クルクルまわしながら表面張力できれいな球形になるようにする。熟練した職人の手にかかると、ほんの数秒で、整ったガラス玉が鉄線に巻き取られていく。単純なガラス玉なら、これで出来上がり。1本の鉄線4箇づつを巻いて、きれいな藁灰に埋めて、徐々に冷やす。急に冷やすと、歪みで割れるおそれがある。炎を作る燃料の違いと、モーターによる送風を別にすれば、古代の巻き玉作りも、ほとんどこのままのやり方で、おこなわれていたに違いあるまい。
ギザギザの筋のついた玉ならば、ガラス玉が柔かいうちに、垂直に立てた鉄戸のふちに押しつけて、ミカンの房のような割れ目をつける。偏平な玉や、三輪玉のような形のビーズの場合には、鉄の型板の上を、何度か転がして、形を整える。
トンボ玉
色変りの玉を作るには、出来上った玉を再びあたためて、別の色の細いガラス糸を、その上に禍巻き状に巻きつけたり、輪切りにした模様入りガラス片を貼りつけたりしていく。古代の管玉やトンボ玉の類も、これとさぼど変らない技術で作ったのだろう。
屈伏点
ここで使っている鉛ガラスは、やわらかくなり始める温度、届伏点が650℃から700℃で、せいぜい1000℃までで加工をおこなうとのこと。炎は灯油ランプに、ベンゾールを燃料として入れて燃やし、モーターで強制送風して火力を高める。
藁灰にうめてゆっくり冷やしたガラス玉は、水につけて粘土を濡らし、鉄線から抜きとって、気泡やキズがないことを確かめて出来上りで、鉄線のとおっていた穴が糸とおしの穴となっている。
現在のガラス玉の工房の仕事は、これで一通り見学したことになる。佐竹ガラスには更に、博物館内では簡単にやってみることが出来ない、鋳型に熔けたガラスを流しこむ実験をお願いした。
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