秋の万葉歌
秋は、額田王と柿本人麻呂の歌をどうぞ
冬籠もり春さり来れば、鳴かざりし鳥も来鳴きぬ。
咲かざりし花も咲けれど、
山を茂み入りても採らず草深みとりても見ず
秋山の木の葉を見ては
もみづをばとりてぞしぬぶ
青きをばおきてぞ嘆く
そこしめずらし
秋山われは
(訳)春がやってくると、これまで鳴かなかった鳥も鳴き出す。
咲かなかった花も咲いてはいるけれど
山は木が茂り過ぎているのでわざわざ入りこんでまでも採らない
草が深いので手にとっても見ないけれども
秋の山にある木の葉を見るときには
何もかも忘れて紅葉した葉を
手に取上げて慕うことだ
青い葉はそのままおいておいて秋の美しさに見惚れて
嘆息するばかりである
さあそれが秋山に惹かれるところだ
私は秋をとります
(万葉集 巻第1-16)
春と秋だったらどっちが好き?という問いに対して
春も秋も言及した上でやっぱり秋が好き
という額田の微妙な歌運び。
さすが万葉を代表する歌人ですね!
秋山の 黄葉を茂み 迷いぬる
妹を求めむ 山道知らずも
(訳)秋の山の紅葉が余りに深いので彼女は迷ってしまったらしい
その妻を探そうにも山道をどう行ったらよいかわからないことよ
(万葉集 巻第2-208)
草壁皇子・高市皇子・明日香皇女を初めとする多くの人のために
挽歌を捧げている柿本人麻呂。
その彼も最愛の妻の死にはひときわ哀しみを募らせたことでしょう
更新日:2002,12,4