私の明日香ファイル
〜明日香の見どころ、歩きどころ〜



  File No. 020 橘寺 たちばなでら

 明日香村橘532


仏頭山上宮皇院菩提寺(ぶっとうざんじょうぐうおういんぼだいじ)が正式名称である。・・・知らなかった。
明日香では少し影の薄い聖徳太子だが、ここでは堂々の主役。寺伝が物語る「太子出生の地」であるかどうかははっきりしないが、太子による勝鬘経講説のときに、蓮の花が天から溢れ落ち、この地に降ったという。
白状すると、私は寺の名前から、降ったのが橘の花であったと間違えていた。くれぐれもお間違えのないように。

太子殿の南庭にある二面石は、これもやはり明日香特有の石造物である。猿石などと同じ時代のものかも知れないが、さすがに寺院に置かれているためであろうか、いつしか「善と悪の二面を表す」というような解釈が付加されたようである。

橘寺と言えば、思い出す歌がある。

橘の 寺の長屋に 我が率寝(ゐね)し 童女放髪(うなゐはなり)は、髪上げつらむか  (万葉集巻16・3822)

橘寺の長屋に連れ込んだ、まだ髪を結ってもいなかったあの少女は、もう髪上げをしたのだろうか?

・・・どこまでも不届き者の、私である。

 奈良交通バス停川原または岡橋本下車すぐ

 0744-54-2026


・聖徳太子創建七ヶ寺の一つとされるが、その時代については明らかでない。
・創建伽藍は、中門、塔、金堂が直線状に並ぶ四天王寺式だが、東面するところが珍しい。
・東面する理由については、地形による制約説と、東門が中ツ道に面するためとの説がある。
・豊浦寺と同様、尼寺であった。
・境内に、発掘された塔の心礎がある。円柱を受ける切込みに、三箇所の半円形の添え木のための切込みを添えた美しい形である。