◇弥生人はどこから来たか?

そのルーツを中国江南に探る

第1章 弥生人が見えてきた

@なぜいま江南人骨なのか

我々日本人の祖先はどこから来たか?このテーマは、日本古代史に残された大きな課題の一つである。と同時に、日本人(特に渡来系弥生人)のルーツを探ることは、現代日本人が最も関心を持っている浪漫の一つであろう。

なぜなら、この渡来系弥生人が現代日本人の形質に一番大きな影響を与えているといわれており、学問的なテーマでありながら身近な問題であり、今日的意義も大きいからである。

渡来系弥生人とは、中国大陸からイネを運んできた渡来民のことである。そこで、共同調査団としては、イネの故郷と思われる中国・江南地方にターゲットを絞った。しかし、今まで江南地方からは日本の弥生時代に相当期(中国の春秋戦国時代〜前漢時代)の古人骨はまったく出土していなかった。このため江南人骨との対比調査は未知の分野であった。

ところが、昨秋(1998年11月)の第3回訪中調査で3ヵ年にわたる共同調査を終了したが、予期せざる大きな成果をあげることができた。それは中国側の絶大なる協力と南京博物院の精力的な努力によって提供された未研究の江南人骨数体の中に、日本の渡来系弥生人に極めて類似する固体が数多くあることを確認できたのである。


A衝撃的な成果を上がる

南京博物院の調査研究室にずらりと並んだ江南人骨をまず、頭骨、続いて四肢骨と入念な計測作業が続く。この日は計測を始めて3日目であった。

日ごろ、慎重そのものの3人の学者(山口敏・国立科学博物館名誉研究員、中橋孝博・九州大学教授・分部哲秋・長崎大学講師)が「江南人骨の多くは渡来系弥生人にそっくりである」と自信に満ちた言葉で言われた。

「まだサンプル数が少なく、多少の固体変質はあるが……」との注釈は付いたが、「江南に弥生人の原郷があった」という発見は、人類学上も衝撃的な成果であった。

「日本の渡来系弥生人にそっくり」の古人骨を江南地方で発見し、分析研究できたことは、日本はもちろん、中国でも今回が初めての画期的な成果であった。  

この成果が1999年3月18日、東京国立博物館で、日中共同調査団(日本側団長=山口敏)からマスコミに正式発表され、各報道機関から全国に詳しく報道されている。  この発見は人類学会だけでなく、考古学・農学などの周辺諸分野の研究者にも反響が大きく、また、国民的な話題と関心を読んだ。


このホームページへのお問い合わせは kamiya@f-mon.netまで