三侠五義・其の弐 包公断案(包公の裁き)・2
 

 さて、金龍寺で包公と包興を救い出し、二人の悪僧を殺害した後、南侠展昭は人助けをしながら、放浪生活を続けていた。
 ある日、展昭は道中で、老いも若きもお互いを支えあい、涙にくれる、見るも悲惨な避難民達に遇った。
 展昭が事情を尋ねると、人々はその苦しみを話した。
「わしらは陳州の良民ですが、ほういくが陳州に来てからというもの、民を救済するどころか、良家の婦女を攫って来ては自分の妾とし、また人を捕まえては自分の庭園を造らせるので、わしらは為す術もございません。」

 それを聞いた展昭は、怒り心頭、急いで陳州へ駆けると大通りに出かけた。
 道々尋ね歩いて、展昭は陳州でほういくが居住している皇族の庭園に着いた。周囲を一通り偵察して、すぐ近くに宿をとった。
 夜更けて、忍び装束に着替えた展昭は、身を翻して園内に飛び入った。
 微かに泣き声がするので、そちらの方へ行くと、着いたのは離れの楼閣である。窓の隙間から覗き見ると、一人の若く美しい女性が、手足を縛られて閉じ込められていた。


三侠五義トップへ 前へ 次へ